日本小児外科学会雑誌
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超音波所見による小児急性虫垂炎の手術適応 : 特にパワードップラー法の有用性について
志関 孝夫鎌形 正一郎広部 誠一東間 未来李 光鐘猿渡 由美子宮本 純平浅井 宣美森川 征彦林 奐
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2006 年 42 巻 1 号 p. 16-22

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抄録

【目的】小児急性虫垂炎に対し, 超音波所見と病理所見とを後方視的に比較検討し, さらに超音波検査(Bモード)にパワードップラー所見を加味して新たな病期評価と治療方針を作成すべく検討を行った.【方法】過去2年4カ月間の急性虫垂炎症例100症例を対象とし, 病期を超音波検査による虫垂壁の層構造をGrade I: 層構造明瞭, Grade II: 層構造不整, Grade III: 層構造なし, の3段階に評価した.そのうちの15例にパワードップラーを行い, 虫垂壁の血流を, なし, 少, 中, 多の4段階に評価した.虫垂径は6mm以上を炎症ありとした.【結果】超音波検査(Bモード)結果は, Grade I 15例, Grade II 66例, Grade III 19例であった.Grade Iは全例保存治療で軽快し, Grade IIは12例が保存治療, 54例が手術となった.Grade IIIは全例手術となった.手術症例は73例で, 病理診断はカタル性2例(2.7%), 蜂巣炎性30例(41.1%), 壊疽性41例(56.2%)であった.パワードップラーを行った15例のうち保存治療例は8例, Grade Iの5例は全例血流が少ないながらもみられ, Grade IIの3例は全例血流が増加していた.手術症例は7例あり, 病理診断で蜂巣炎性の3例のうち血流の多い症例はなかった.病理診断で壊疽性の4例のうち3例には血流が全くみられなかった.【結論】急性虫垂炎, 特に蜂巣炎性においては超音波検査(Bモード)の形態学的な診断のみでは不十分であり, パワードップラーを追加することで, 超音波画像上蜂巣炎性が疑われる場合でも血流の評価で可逆性か非可逆性かの鑑別が可能となり, 手術適応の決定に有効であると思われた.

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