日本小児外科学会雑誌
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横隔膜ヘルニアに合併する胃食道逆流 : 急性期の栄養管理について
田中 圭一朗北野 良博森川 信行渕本 康史寺脇 幹川島 憲子町頭 成郎中川 聡伊藤 裕司中村 知夫黒田 達夫本名 敏郎
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2006 年 42 巻 2 号 p. 188-192

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抄録

【目的】横隔膜ヘルニア(congenital diaphragmatic hernia,以下CDH)の合併症としての胃食道逆流(gastroesophageal reflux,以下GER)が,どのような症例に合併しやすいか検討した.その結果を踏まえて,当院における急性期栄養管理の治療戦略を検討した.【対象】2002年3月〜2004年8月末までの2年6カ月間に当院で根治手術を施行した新生児CDH症例19例を対象とした.GERの判定が不能な3例を除外し16例をGERの有無により2群に分けて,出生前診断の有無・在胎週数・出生体重・左右・一酸化窒素(nitric oxide,以下NO)使用の有無・extracorporeal membrane oxygenation (ECMO)使用の有無・パッチ縫着か直接縫合か・胸腔への肝脱出の有無について統計学的検討を行った.【結果】CDH16例中5例(31%)にGERを認めた.NOを使用した症例と,パッチ縫着を要した症例では有意にGERの合併が多かった.その他の因子との関連は認めなかった.【考察】新生児のCDH症例において,GERの合併により,経管栄養にしばしば難渋することがある.当院においても,経鼻的幽門後栄養チューブ(以下 経腸栄養チューブ)を挿入しない限り,嘔吐により経菅栄養を開始できない症例を経験した.そこで,CDH全症例に対し術中に経腸栄養チューブを挿入することを始めた.挿入は容易で,合併症はなく,術後の栄養管理が有利に進められた.術前・術中にGERの診断は困難であるため,少なくとも合併が高率であったパッチ縫着症例には,術中に経腸栄養チューブを挿入すべきであると考えられた.

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