日本小児外科学会雑誌
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いわゆる"肺葉性肺気腫"症例の検討
李 光鐘鎌形 正一郎広部 誠一東間 未来吉田 史子猿渡 由美子彦坂 信宮川 知士森川 征彦林 奐
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2007 年 43 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

【目的】肺葉性肺気腫は気管支のチェックバルブ機構によって肺葉が過膨張をきたす疾患と考えられているが詳細な検索で原因が判明することがある.当院において肺葉性肺気腫と診断した症例を検討し,その病態に関して考察を加え報告する.【対象】最近32年間に当院において呼吸器症状を有し胸部X線写真で肺葉の過膨張を認めた20症例を対象とした.原因検索は胸部CT,気管気管支ファイバー,あるいは気管支造影で行なった.【結果】男女比は14例:6例であり,発症年齢は6か月末満が14例,6か月以上6歳未満が4例,6歳以上が2例であった.病変部位は,右が8例(右中葉2例,右下葉3例,右全体3例),左が10例(左上葉6例,左下葉4例),両側2例(両下葉1例,右下葉+左全体1例)であった.原因別では,内因性が15例,外因性が3例,術後他の疾患であることが判明したものが2例であった.内因性の内訳は気管支狭窄が6例,末梢気管支がびまん性に細かったものが2例,気管支閉鎖が6例,気管支拡張が1例であった.外因性では嚢胞による圧排が1例,血管性の圧迫が2例であった.原因不明のまま手術を行ない肺分画症と判明したものが1例,術後病理診断で先天性嚢胞状腺腫様形成異常(CCAM)と判明したものが1例であった.【考察】いわゆる肺葉性肺気腫は単一の疾患ではなく肺葉の過膨張をきたすさまざまな疾患の総称と考えられ,疾患名としての"肺気腫"は病理学的な観点からしても適当ではない.全体の75%が術前検査で原因を検索し得,術後診断も加えると全例で過膨張の原因を知り得た.診断にあたってはその原因を追求する努力が肝要であり,原因疾患に応じた治療が必要と考える.

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