日本小児外科学会雑誌
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小児の静脈切開による中心静脈ルート確保133例の経験
飯干 泰彦澤井 利夫関 保二田附 裕子鈴村 和大藤元 治朗
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2007 年 43 巻 1 号 p. 18-22

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抄録

【目的】静脈切開法による中心静脈ルートの確保は,治療上必要不可欠でありながら,カテーテルの挿入に難渋する場合も存在する.今回,当院小児例に用いられているシラスコン静脈カテーテルO型(3.6Fr)およびHickmanダブルルーメンカテーテル(7Fr)を挿入した症例に対し,患児の背景,挿入の成否,挿入困難の原因を検討した.【対象と方法】2001年から2004年の4年間で当科にて,静脈切開にて中心静脈ルートを確保した新生児より15歳までの133例を対象とした.原疾患,年齢,カテーテルの種類,挿入血管,挿入の成否を検討し,挿入時の問題点の分析を行った.【結果】原疾患は,白血病等の血液疾患や固形腫瘍が57例,消化器疾患が41例,肺炎,腎不全等の全身管理を要する疾患が35例であった.シラスコン静脈カテーテルO型(3.6Fr)は,延べ39例に用いられ,新生児,乳児に挿入例が多く,Hickmanダブルルーメンカテーテル(7Fr)は,延べ98例に用いられた.最初の血管で133例中129例に中心静脈ルートの確保がなされ,2番目の血管で4例中4例にルートを確保できた.最初の血管でルート確保が困難であったのは,8歳右外頚静脈および10歳左外頚静脈でHickmanカテーテルの血管内先端誘導ができなかった.6歳左橈側皮静脈ではHickmanカテーテルが血管より太くて入らなかった.8歳右外頚静脈では,シラスコン静脈カテーテルが血栓による右鎖骨下静脈の閉塞のため入らなかった.【結論】今回の検討では,新生児,乳幼児は,血管の伸展性,方向の操作性も高く,挿入困難例はなかった.挿入困難の原因は,血管内血栓,太いカテーテルでは血管分岐部の角度,外頚静脈以外では血管のサイズであった.

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