2007 年 43 巻 1 号 p. 53-57
Wiskott-Aldrich症候群を合併したH型気管食道瘻(Gross E型食道閉鎖症)の1例を経験した.症例は生後4日,女児.在胎35週,出生時体重1,918g.多呼吸,腹部膨満を主訴に入院.上部消化管造影により第2胸椎レベルのH型気管食道瘻と診断した.また血小板減少を認め,家族歴からWiskott-Aldrich症候群と診断した.生後9日目に血小板輸血を行い,右側頚部アプローチによる気管食道瘻閉鎖術を施行した.術後の食道造影では嚥下時の食道屈曲が認められたが,その他の合併症は認めなかった.本例の経験から本症では十分な視野のもとに気管食道瘻の切離と瘻孔断端の確実な縫合閉鎖を行うこと,術中の気管,食道の剥離操作は極力最小限に止めること,および術後の呼吸管理は可及的低圧で行うことなどが術後合併症を回避するために重要と思われた.一方,H型気管食道瘻とWiskott-Aldrich症候群の合併は報告例がなく,両者の遺伝学的関連は否定的で本例は稀な症例と考えられた.