日本小児外科学会雑誌
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Hirschsprung病術後腸炎の臨床的発症因子の検討 : Z型吻合-GIA法68例の遠隔成績より
光永 哲也菱木 知郎齋藤 武照井 慶太中田 光政松浦 玄吉田 英生
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2008 年 44 巻 1 号 p. 12-17

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抄録

【目的】Hirschsprung病根治術後の合併症の中で,術後腸炎の占める割合は多い.当科ではZ型吻合-GIA法を1979年より一貫して行っており,この遠隔成績から術後腸炎の臨床的発症要因を解析した.【対象と方法】1977年より2006年までに当科でZ型吻合-GIA法を施行した68例を対象とした.術前の状況(在胎週数,出生体重,性別,診断時日齢,無神経節腸管の範囲,術前腸炎の有無)と根治術時の状態(人工肛門の有無,手術時日齢,手術時体重,合併症)および経時的な術後経過(体重,浣腸・緩下剤の使用状況,ブジーの施行状況,排便回数,便性,排便スコア)を診療録より後方視的に抽出し,腸炎罹患群と非罹患群との間で統計学的解析を行った.【結果】入院治療を要する中等度以上の術後腸炎に罹患した症例は68例中18例(26.5%)で,そのほとんど(93.0%)が術後2年以内に発症していた.腸炎の発症との間に有意な相関関係を示したのは術後2年以内の浣腸・緩下剤の使用状況のみで,連日使用せざるを得ない群に有意に腸炎の発症率が高かった.また腸炎罹患群に術後長期間ブジーを必要とする傾向を認めた.遠隔成績については,排便スコアの平均は5歳:6.4点,10歳:7.8点,15歳:7.9点であり,腸炎を繰り返した症例でも長期的には良好な排便機能を得ていた.【考察】術後腸炎の発症は,根治術後2年以内の排便機能障害が唯一の危険因子で,腸管内容の鬱滞が主な原因と考えられる.ただし,Z型吻合-GIA法の排便機能の遠隔成績は良好であり,術後3年以降は排便機能が成熟するため,腸炎ゐ発症リスクは激減する.

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