日本小児外科学会雑誌
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カテコラミン心筋症による慢性心不全症状にて発症した小児paragangliomaの1例
松浦 玄菱木 知郎齋藤 武照井 慶太光永 哲也中田 光政吉田 英生
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2008 年 44 巻 1 号 p. 18-23

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抄録

慢性心不全で見つかる小児paragangliomaは極めて稀であり,我々は本症の1例を経験したので報告した.症例は13歳男児.約1年前より微熱,全身倦怠感があり,多汗,顔色不良,体重減少,心拡大のため近医より当院小児科に紹介受診となった.著明な拡張型心筋症を呈し,精査目的に入院となった.カテコラミンの異常高値と腹部大動脈を1/2周以上取り巻く腫瘍を認め,paragangliomaが疑われた.心不全は薬物治療では改善せず,腫瘍摘出が必須と考えた.術中の高カテコラミンによる心停止に備え,膜型人工肺・カテコラミン吸着のための持続型血液濾過透析を準備し,手術に踏み切ったが,体外循環を使用せずに腫瘍を切除し得た.自験例と本邦報告計82例中初診時に慢性心不全に至っていた例は自験例が最初と思われた.海外報告例でも慢性心不全での発症は成人に限られていた.腫瘍摘出された40例中13例で再発しており,術後も厳重な経過観察が必要であると思われた.

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