大綱梗塞は小児期ではまれな急性腹症を呈する疾患であり,急性虫垂炎と誤診されることが多い.私たちは腹部超音波検査とCTで大網梗塞と診断され,保存的に治療した1小児例を経験したので報告する.症例は9歳男児.身長142.2cm,体重は65.7kg(BMI33)と肥満を認めた.2日前から右側腹部痛あり,急性虫垂炎を疑われ当科を受診した.体温36.7℃で,右側腹部に著明な圧痛を認め,腹部超音波検査とCTで大綱梗塞と診断された.床上安静・絶飲食・輸液で管理し,5日後腹痛はなくなり退院した.大網梗塞の症状は急性虫垂炎と類似しており,特異的なものはない.腹部超音波検査では通常右下腹部の圧痛点に一致して腹壁直下に楕円形から円筒形で高エコーを示す腫瘤像が描出される.腹部CT検査でも同部に索状の高吸収域を伴う限局性の脂肪織混濁がみられる.大網梗塞は小児,特に肥満児の急性腹症を診察する際には,念頭に入れておくべき疾患である.