2009 年 45 巻 5 号 p. 850-855
我々は肝前性門脈閉塞症において出血を繰り返す2例の難治症例に対し,下腹部の末梢血管を用いたシャント手術を施行し良好な結果を得た.症例1:17歳男児,吐下血で発症し杉浦手術,EISを受けたが症状が改善しないために右精巣静脈と回結腸静脈との吻合によるシャント術を施行した.症例2:8歳女児,吐下血で発症しEISを数回施行したが奏効せず,出血によるショックも発症したため右卵巣静脈と回結腸静脈の吻合によるシャント術を施行した.本術式は手術侵襲が少なく,低年齢でも施行することができる優れた手術術式であり,今後本症で出血のコントロールが困難な症例に対し,第一選択となり得る術式と考えられた.