2009 年 45 巻 5 号 p. 862-867
腸回転異常は,胎生期に中腸が回転・固定される過程の異常により生じ,その多くは新生児期に診断される.われわれは,18歳男性において自己誘発性嘔吐を契機として消化管通過障害が顕在化し,造影CTにて術前診断し得た,青年期発症の不均衡回転を示す腸回転異常症の1例を経験した.術前の造影CTにて結腸の走行および回盲部の位置は正常であったが,十二指腸と上腸間膜動脈の位置関係から十二指腸の回転異常があると考えられた.手術所見では,十二指腸空腸移行部がその腹側を走る回腸と小腸間膜に圧迫されていた.結腸の走行および回盲部の固定は正常であった.以上より不均衡回転を伴う腸回転異常症と診断した.本報告では不均衡回転・固定を伴う腸回転異常の病態,診断に関して考察を加える.