2009 年 45 巻 6 号 p. 946-949
小腸移植レシピエントで,精神医学的問題を呈した2例を経験したため報告する.症例1は20代男性.ヒルシュスプルング病にて頻回の開腹術を受け短腸症候群となり,静脈栄養管理下,脳死移植待機中であった.移植前のうつ状態,衝動的な食行動,移植後のせん妄,イライラや衝動的な行為,希死念慮などがみられた.薬物療法,精神療法にて対応した.症例2は20代女性.ヒルシュスプルング病類縁疾患のため小腸移植施行されたが,それ以前より痛みへの恐怖心,不眠,鎮痛剤への依存傾向がみられ,また再移植後のICUでの経験による心的外傷性のストレス,悪夢,体重増加への抵抗感などがみられた.睡眠導入剤の投与と精神療法を行った.2例とも,その後の経過は順調であった.小腸移植患者においては,移植前からの精神状態の評価を行い,精神的問題に注意を向けることが重要であると思われた.