2009 年 45 巻 7 号 p. 1055-1059
新生児期に発症した小腸腸間膜裂孔ヘルニアの1例を経験した.症例は,30生日の男児.頻回の嘔吐と活気がないことを主訴に,症状発症後7時間で来院.来院時,傾眠傾向にあり,腹部膨満と筋性防御および臍周囲の皮膚に色調変化を認めた.末梢血血液検査では白血球増加を認め,血液ガス検査では代謝性アシドーシスを,血液生化学検査にて高血糖,高カリウム血症を認めた.また,腹部単純レントゲン写真にて上腹部に限局した拡張腸管ガス像を認め,腹部超音波検査にて腸蠕動の消失,腸管壁の肥厚と腸管の拡張,およびダグラス窩に少量の腹水貯留を認めた.絞扼性イレウスによる循環不全・プレショック状態と考え,開腹術を施行した.回腸末端の小腸腸間膜に径2cmの裂孔を認め,同部位への120cmの回腸の嵌入を認めた.小腸腸間膜裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し,壊死腸管120cmを切除し,残存腸管を端々吻合した.残存腸管は149cmであった.術後経過は良好で,術後15日目に退院した.小腸腸間膜裂孔ヘルニアは比較的稀な疾患であるが,術前診断が困難であり,急性期の対応が遅れれば時に致死的にもなりうる.新生児の急性腹症の場合,鑑別診断の一つとして小腸腸間膜裂孔ヘルニアも考慮に入れる必要があると考えられた.