日本小児外科学会雑誌
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初回治療後38年後に腹部腫瘤を指摘された病期3後腹膜原発神経芽腫群腫瘍の症例
金子 道夫
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2009 年 45 巻 7 号 p. 1065-1069

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抄録

39歳の女性が右季肋部痛で受診,超音波検査で肝脾腫とともに上腹部に大きな腫瘤が発見された.生後9か月に後腹膜神経芽腫の診断で東大にて治療を受けたことから筑波大に紹介された.乳児期はVMA陽性,腫瘤は切除不能で生検にて分化傾向のある神経節芽腫と診断され(今回中央病理診断に提出;神経芽腫低分化型low MKI,INPC favorable histology),化学療法・放射線治療後に手術を行ったが切除不能であった.術後化学療法後中学卒業までフォローされた.結婚して2児をもうけている.当院の検査では腫瘤内を腹腔動脈,上腸間膜動脈が貫通し充実性の腫瘍は悪性腫瘍を思わせるが,VMA,HVA,NSEすべて正常MIBG取り込みなく,経過観察とした.その後肝硬変が進行して肝移植を考慮しているが,後腹膜腫瘍は変化が見られず,生検未施行だが神経節腫である可能性が極めて高い.一方,小児期に受けた放射線治療により皮膚移植を必要とした皮膚障害と肋骨消失が見られた.これだけ長期間にわたり大きな腫瘤のままであった神経節腫の報告はなく,診断治療の上で重要な症例である.

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