日本小児外科学会雑誌
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完全静脈栄養管理中に心不全を呈し,カルニチン・セレン投与にて改善した1例
照井 慶太小松 秀吾篠塚 俊介平本 龍吾
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2011 年 47 巻 7 号 p. 1026-1032

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抄録

14歳男児.急性虫垂炎・多臓器不全に対し虫垂切除を施行.術後,多発性消化管穿孔に対しトライツ靭帯から20・80cmの小腸に2箇所の腸瘻を造設し,完全静脈栄養で管理した.周術期には47日間の透析を要した.第87病日,心不全(駆出率37%)を認めたが,精査にて明らかな原因を見出せず,微量栄養素欠乏が除外診断として残った.亜セレン酸Na静脈内投与及び,腸瘻間の60cmの空腸を用いてL-カルニチン投与を開始したところ,3週後には駆出率68%と改善を認めた.心不全時,遊離カルニチン・セレン血中濃度は標準値下限をわずかに下回る程度であったが,腸瘻閉鎖後に遊離カルニチンが著明に低下した.カルニチン血中濃度低下は症状発現時期とずれることがあり,心不全時に潜在的な欠乏があったと思われる.多くの危険因子(絶飲食・透析・腸液流出)を併せ持っていたことからも,本症例の心不全はカルニチン欠乏に起因すると考えられた.

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