2011 年 47 巻 7 号 p. 1043-1047
症例は2歳10か月の女児.突然の腹痛と嘔吐を主訴に当院を紹介受診した.腹部に軽い膨隆はあるが腫瘤は触知し得ず,腹膜刺激徴候はなかった.血液検査異常は白血球の軽度上昇のみだった.単純X線写真で腸管の圧排像を認め,腹部エコーでは境界明瞭,内部均一で薄い被膜と隔壁を伴う13cm大の巨大腫瘤を認めた.造影CTでは被膜に淡い造影効果を認めた.MRIではT1強調画像,T2強調画像ともに高信号で,脂肪抑制条件で均一に信号低下を認めた.準緊急的に手術を行い,空腸間膜に発生した脂肪性腫瘍を空腸の一部とともに全摘除した.組織所見から診断を脂肪芽腫と確定した.腸間膜に発生する脂肪芽腫は稀であり,巨大化して初めて気づかれることが多い.脂肪肉腫との鑑別を要するが,特異的な検査所見がないため術前診断は非常に困難である.本邦での腸間膜脂肪芽腫の報告例11例をまとめ,若干の考察を加えて報告した.