日本小児外科学会雑誌
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胃瘻造設術と術後胃食道逆流との関係について
毛利 純子飯尾 賢治加藤 純爾新美 教弘田中 修一
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2012 年 48 巻 2 号 p. 187-192

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抄録

【目的】近年,嚥下困難に対して胃瘻造設を施行する症例が小児領域においても増加している.患児の多くは重症心身障がい児であり,これらの症例は嚥下障害に加え胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;以下GERD)を発症することが多い.今回,われわれは胃瘻造設術がもたらす胃食道逆流の変化について24時間下部食道pHモニタリングを用いて検討した.【方法】2006年1月から2009年12月までの間に,当科で胃瘻造設のみが施行された小児50例を対象とし,術前後の24時間下部食道pHモニタリングによって手術の影響を検討した.対象例全例は術前,嚥下困難を主訴としていたが,明らかなGERDの症状は呈していなかった.また,胃瘻造設にまつわる諸因子,すなわち,手術時年齢,原疾患,胃瘻造設部位について胃瘻造設術が24時間下部食道pHモニタリングに与える影響を検討した.【結果】24時間下部食道pHモニタリングにおいて,pH4未満の時間の割合を示す逆流時間率(reflux index;以下RI)が術前,術後ともに10%未満で不変と判断したものが50例のうち42例,術前RIが10%以上で術後10%未満であった改善例を4例,術前RIが10%未満で術後10%以上であった悪化例を4例に認めた.悪化例4例中3例は明らかな悪化であり,2例は術後GERDの症状が著明となったためのちに逆流防止術を必要としたが,その他の症例で術後GERDの症状の明らかな変化はなく,全体として術前後のRIに有意差は認められなかった.また,手術時年齢,原疾患,胃瘻造設部位の諸因子はいずれもRIに有意な影響を与えなかった.【結論】小児患者に対する胃瘻造設術は胃食道逆流の発症に有意には影響しないと考えられた.

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