卵巣のまれな境界悪性腫瘍である顆粒膜細胞腫の1例を経験したので報告する.症例は14歳女児.偶然大量の腹水貯留を伴う6cm大の卵巣腫瘍を指摘されて紹介搬送された.画像検査上は明らかな他臓器浸潤や遠隔転移なく,有意な腫瘍マーカー上昇や内分泌症状も認めず,腹水穿刺細胞診も陰性であった.手術は下腹部小切開にて開腹,暗黄緑色腹水を約5.5l吸引して右付属器切除術を施行した.術後経過は良好で腹水の再貯留なく,術後6日目に略治退院した.術前画像および術中迅速組織診で漿液性腺癌が疑われたが,永久組織標本にて成人型顆粒膜細胞腫と診断された.術前に見られた多量の腹水は腫瘍摘出とともに消失し,Meigs症候群に類似する症候と考えられた.腫瘍の被膜破綻なくstage Ia相当であったため補助治療を行わず,術後2年現在,腹水の再貯留や局所再発・遠隔転移の所見なく外来経過観察中である.