2012 年 48 巻 5 号 p. 877-881
症例は2歳男児で,夕食後から間欠的腹痛を訴え始め当院救急部を受診した.腹膜刺激症状はなく,体表に外傷を示す所見はなかった.腹部レントゲン写真にて上腹部に針金様の異物が見つかり,腹部CTにて異物は肝左葉内側区域に刺入し,その先端が門脈臍部に近接しているのが描出された.異物誤飲を疑わせる病歴は聴取されなかった.緊急に腹腔鏡下に腹腔内を検索,長さ約2.5cmの針金様異物が肝内側区域表面にわずかに刺入しているのが見つかり,腹腔鏡下に摘出した.腸管穿孔や癒着などの異常所見は認められなかった.術後は順調に経過し6日目に退院した.本症例では誤飲した異物が上部消化管を穿通し肝に刺入,消化管穿通部は腹膜炎をきたさずにすぐに自然閉鎖したと考えられた.肝実質に刺入した異物は出血や感染の合併症をひきおこす危険があり,見つけ次第摘出すべきである.