日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
消化管を介して肝に迷入したと思われる小金属片を腹腔鏡下に摘出した1例
田中 秀明山田 耕嗣石濱 秀雄高橋 正貴山田 和歌武田 憲子渡邉 稔彦藤野 明浩金森 豊堤 義之
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 48 巻 5 号 p. 877-881

詳細
抄録

症例は2歳男児で,夕食後から間欠的腹痛を訴え始め当院救急部を受診した.腹膜刺激症状はなく,体表に外傷を示す所見はなかった.腹部レントゲン写真にて上腹部に針金様の異物が見つかり,腹部CTにて異物は肝左葉内側区域に刺入し,その先端が門脈臍部に近接しているのが描出された.異物誤飲を疑わせる病歴は聴取されなかった.緊急に腹腔鏡下に腹腔内を検索,長さ約2.5cmの針金様異物が肝内側区域表面にわずかに刺入しているのが見つかり,腹腔鏡下に摘出した.腸管穿孔や癒着などの異常所見は認められなかった.術後は順調に経過し6日目に退院した.本症例では誤飲した異物が上部消化管を穿通し肝に刺入,消化管穿通部は腹膜炎をきたさずにすぐに自然閉鎖したと考えられた.肝実質に刺入した異物は出血や感染の合併症をひきおこす危険があり,見つけ次第摘出すべきである.

著者関連情報
© 2012 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top