2012 年 48 巻 7 号 p. 1047-1050
0生日女児.出生時,剣状突起より2cm尾側の正中に1×2cm大の腹壁の全層欠損があり,肝の表面が露出していた.また,左側腹壁の膨隆を認めた.臍帯とその周囲に異常なく,その他の合併奇形は認めなかった.4生日に腹壁の部分欠損を伴う上腹壁ヘルニアの診断で手術を施行した。肝と癒着した腹壁欠損縁を剥離後,腹壁を検索すると菲薄だが筋層を認め,左側筋層がより菲薄であった.筋層と皮膚の2層で縫合閉鎖した.腹壁の形成異常としては腹壁破裂,臍帯ヘルニア,脊柱などの多発奇形を伴うbody stalk anomalyや,腹壁筋低形成を呈するprune belly症候群が知られるが,他の非定型的な腹壁欠損症例の報告は少なく,検索しえた限りでは6例のみであった.自験例の病因については,器官形成時期における側方皺襞の伸展癒合障害と沿軸中胚葉由来の筋板の伸長・分化障害が左上腹部に相当する部分で起こったと考えられた.