2013 年 49 巻 4 号 p. 954-958
門脈圧亢進症による小腸出血に対して薬物療法が奏功した1 例を報告する.症例は胆道閉鎖症(IIIb1ν)のため肝門空腸吻合を施行し順調に経過していたが,1 歳10 か月から下血を短期間に繰り返すようになった.上部消化管内視鏡検査,出血シンチで出血病変を検索したが発見できず,門脈造影CT 検査で空腸吻合部に限局性の腸間膜静脈のうっ血像を認めた.出血部位の診断と同部の腸切除を目的に開腹したが,出血点は認めず腸管壁の血管拡張は広範囲にわたるため腸切除は施行しなかった.術後,スピロノラクトンとプロプラノロールを投与し以後2 年間下血を認めていない.門脈圧亢進症による小腸出血は比較的まれで臨床像も様々で診断,治療も確立したものはない.本例では薬物療法のみで長期に出血を防止できており小腸出血例では外科治療前に内科療法を試みる価値は十分あると考えた.