日本小児外科学会雑誌
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原著
胎児上部消化管閉鎖症における羊水中膵酵素濃度の解析
中原 さおり松本 順子市瀬 茉里畑中 玲武山 絵里子与田 仁志武村 民子石田 和夫
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2013 年 49 巻 7 号 p. 1217-1223

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抄録

【目的】臍帯潰瘍は胎児上部消化管閉鎖症に合併し,ひとたび臍帯からの出血が起こると,高頻度に子宮内胎児死亡や児の重度障害を起こすことが知られている.原因として胎児の吐物による臍帯のワルトンゼリー変性の可能性が挙げられているが,詳細はいまだ不明である.胎児吐物中の膵酵素がワルトンゼリー変性に関与する可能性を探るために,羊水中の膵酵素濃度の上昇の有無を調べた.
【方法】2009 年7 月から2011 年6 月までに当センターで経験した上部消化管閉鎖症6 例(A 群)とこれらを伴わない羊水過多症6 例(B 群),計12 例の羊水中の胆汁由来物質(総ビリルビン,直接ビリルビン,胆汁酸),および膵酵素(膵アミラーゼ,リパーゼ,膵フォスフォリパーゼA2,トリプシン)の濃度を測定した.
【結果】A 群では膵アミラーゼを除く膵酵素の異常高値を認めた.具体的にはB 群の膵アミラーゼ9 IU/ l,リパーゼ3.5 IU/ l,膵フォスフォリパーゼA2 99 ng/dl,トリプシン170 ng/ml(それぞれ中央値)に対し,A 群6 例の中央値はそれぞれ16.5 IU/ l,4,055 IU/ l,63,050 ng/dl,30,400 ng/ml であった.
【結論】限られた症例数ではあるが,臍帯潰瘍を合併することが知られている十二指腸閉鎖症および空腸閉鎖症の羊水中では,膵アミラーゼを除く膵酵素の濃度が著明に上昇していることが明らかとなった.羊水中の膵酵素濃度の上昇が臍帯潰瘍発生に関与する可能性があると考えられる.

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