2016 年 52 巻 4 号 p. 943-948
症例は5 歳の女児で,陰毛の発育を主訴に近医を受診した.血液生化学検査にてテストステロンが1.25 ng/ml と上昇しており,超音波検査,CT およびMRI にて右副腎に6 cm 大の腫瘍を認めたため当科に紹介された.周囲組織への浸潤,腹腔内リンパ節転移および肝や肺などへの遠隔転移は認められなかった.以上より,アンドロゲン産生副腎皮質腫瘍と診断し,腹腔鏡手術の方針となった.手術所見では,右副腎原発の腫瘍を認め,下大静脈と接していたが明らかな浸潤は認めず,被膜を損傷することなく正常副腎とともに摘出した.腹腔鏡では,視野が良好で,下大静脈との剥離や血管処理が容易であった.腫瘍は径36×52×58 mm,重量75 g で通常の病理組織学的指標のみで良性,悪性の鑑別を行うことは困難であるためWieneke の評価項目を用いて副腎皮質腺腫と診断した.術後の血液生化学検査にてテストテロンは正常範囲に戻り,陰毛は消失した.術後補助療法は行わず,1 年7 か月が経過した現在,腫瘍の再発は認めていない.