日本小児外科学会雑誌
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症例報告
化学療法により肝右葉尾状葉切除で治療できた先天性肝芽腫の1 例
近藤 玲美加藤 翔子金子 健一朗
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2016 年 52 巻 4 号 p. 982-986

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抄録

先天性肝芽腫とは出生前ないし生後1 か月未満に診断された肝芽腫で,まれである.症例は在胎38 週で経膣分娩直後に肝腫瘍破裂で発症した.日齢9 のαフェトプロテイン(AFP)は264,109 ng/ml と正常域だが,L3 分画は29%と高値だった.肝血管腫と鑑別が困難で生検により肝芽腫と診断した.画像では下大静脈閉塞を伴う肝右葉の巨大腫瘍であった.日齢29 から4 クールの化学療法で下大静脈が開存し,肝右葉尾状葉切除で摘出が可能となった.術後AFP は正常域内で低下し,L3 分画は検出されなくなった.化学療法を2 クール追加して退院した.術後1 年4 か月現在,無病生存している.先天性肝芽腫は報告例でも新生児期前半はAFP 値が正常域にある.本例からL3 分画は診断と治療効果判定に有用と示唆された.先天性肝芽腫は予後不良と報告されたが,慎重な化学療法と手術の組み合わせで,通常の肝芽腫と同様に治療可能である.

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