日本小児外科学会雑誌
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原著
先天性十二指腸閉鎖症・狭窄症におけるtransanastomotic tubeの有用性の検討
加藤 怜子佐伯 勇向井 亘今治 玲助秋山 卓士
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2016 年 52 巻 5 号 p. 1020-1024

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抄録

【目的】消化管閉鎖症に対するtransanastomotic tube(以下TAT と略す)を使用した術後早期からの経腸栄養の開始は入院期間の短縮や術後合併症の減少につながると多く報告されている.しかし,先天性十二指腸閉鎖症・狭窄症に対するTAT の有用性に関する報告は少ない.当院では2012 年より先天性十二指腸閉鎖症・狭窄症に対してTAT の使用を開始しており,その有用性について検討した.

【方法】2007 年1 月以降2014 年12 月までに当院において先天性十二指腸閉鎖症・狭窄症と診断された症例を対象として後方視的検討を行った.2007 年から2011 年のTAT 非使用群7 例(NT 群)と2012 年以降のTAT 使用群6 例(T 群)の2 群に分けて検討し,術後のfull feeding までの日数,術後中心静脈カテーテル留置期間,最大体重減少率,入院期間を後方視的に比較した.

【結果】術後のfull feeding までの日数は,T 群がNT 群に比べて有意に短縮していた(中央値13 日vs 6.5 日P=0.018).特に十二指腸に拡張が残存し術後に機能的通過障害を生じるような症例に対してTAT は安定してfull feeding までの日数を短縮する.また,中心静脈カテーテル留置期間も有意に短縮した(中央値14 日vs 11.5 日P=0.049).一方,入院日数,光線療法の日数はT 群で短い傾向にあったが,有意差は認めなかった.

【結論】TAT はfull feeding までの日数,中心静脈カテーテルの留置期間を有意に短縮し,十二指腸閉鎖症・狭窄症に対して有用と考えられる.

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