日本小児外科学会雑誌
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原著
先天性心疾患に合併した新生児壊死性腸炎6例の検討
好沢 克高見澤 滋畑田 智子岩出 珠幾吉澤 一貴
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2016 年 52 巻 5 号 p. 1037-1041

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抄録

【目的】当院で経験した先天性心疾患に合併した壊死性腸炎(以下本症)についてその臨床像について検討した.

【方法】過去21 年間に当院で経験した6 例を対象とした.対象について患者背景,心奇形の種類,心奇形への外科的またはカテーテル治療の有無および日齢,治療前後および発症時の血行動態の変化,発症時日齢,発症前の低酸素事象の有無,発症時哺乳の有無,発症から手術までに要した日数,初回手術術式,壊死腸管の部位,転帰を検討した.

【結果】出生体重,在胎週数は2,614 g(433~3,516 g),38 週4 日(27 週0 日~40 週5 日),男児が4 例であった.全例チアノーゼ性心疾患を有し,4 例に発症前に外科的あるいはカテーテル治療が行われ,治療時日齢は8.5(0~27)で,発症直前にショック,無酸素発作を各1 例認めた.外科的またはカテーテル治療を行った4 例では,治療後に血中酸素飽和度が全例上昇し,3 例で血圧が低下していた.発症時の日齢は12(5~27)で全例が新生児期の発症であり,5 例は哺乳していた.初回手術はドレナージのみ1 例,腸瘻造設2 例,腸瘻造設+ドレナージ2 例,腸瘻造設+壊死腸管切除1 例であり,発症から手術まで中央値で8 日(1~44 日)を要した.壊死腸管は全結腸2 例,横行結腸~下行結腸1 例,下行結腸~S 状結腸2 例,横行結腸のみ1 例であった.6 例中5 例が生存していた.

【結論】満期産児であっても,チアノーゼ性心疾患を合併し腸管血流の減少をきたしうるイベント後,比較的短時間で本症を発症する可能性がある.また適切な外科的介入の時期,方法により先天性心疾患を合併した本症の予後は良好と推察された.

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