2016 年 52 巻 5 号 p. 1042-1046
出生前,出生後,葛西手術後において胆管形態の経時的な変化がみられた胆道閉鎖症の女児例を報告する.出生前に肝下面にI cyst 様囊胞を認めるも妊娠経過中に囊胞が消失し,生後は黄色便を認め,腹部超音波検査でも胆管拡張を認めなかった.生後2 か月時に灰白色便と黄疸を指摘され当科を紹介され,生後67 日にIIIb1ν型胆道閉鎖症として葛西手術を施行した.生後6 か月時に肝内胆管の拡張を来したために肝内胆管空腸吻合術を施行し,葛西手術後3 年を経過した現在,肝内胆管の拡張はみられず,黄疸はなく肝機能も正常である.出生前に胆管拡張を来した例では,出生後に胆管拡張が消失した場合でも厳重な観察を行う必要があり,また,葛西手術後に肝内胆管の拡張を来しても,胆管吻合が可能な例では再採掘術あるいは再々採掘術など積極的な治療を行う意義がある.