2016 年 52 巻 5 号 p. 1077-1082
小児の外傷性主膵管損傷は稀で,いまだ標準的治療が確立していない.今回,腹部鈍的外傷により主膵管損傷を伴った小児膵外傷を経験したので報告する.症例は6 歳男児,転倒後に上腹部痛が出現し,CT 検査で膵体部の断裂像を認め,日本外傷学会分類IIIb 型と診断した.膵管ステント留置を試みたが困難であった.腹膜炎症状を認め,外科的治療の適応と判断し開腹ドレナージを施行した.術後5 日目に腹膜炎症状とドレーン排液の膵酵素の上昇を認め,緊急手術を施行した.腹膜炎による膵周囲の癒着のため脾温存は断念し,脾合併膵体尾部切除術を施行した.膵液瘻と脾静脈出血を認め,再手術を必要としたが,その後の経過は良好で,入院43 日目に退院となった.保存的治療が奏功しないIIIb 型に対して,外科的治療を行う場合には,手術操作が煩雑になり膵液瘻などの合併症が発生しうることから再ドレナージを念頭に置いた術式の選択が肝要である.