2017 年 53 巻 1 号 p. 84-88
症例は異染性白質ジストロフィーの13 歳男児.繰り返す誤嚥性肺炎のため,11 歳時に第1-2気管軟骨レベルで高位気管切開が行われた.しかし,その後も誤嚥性肺炎を繰り返し,またCT,気管支鏡所見から将来的な気管腕頭動脈瘻の発生が危惧された.このため,誤嚥の改善と,気管腕頭動脈瘻のリスク低下を目的に,12 歳時に福本らの提唱する術式(福本法)で喉頭気管分離術を施行した.手術では,気管を拳上することなく大きな気管孔を確保できたが,高位気管切開術後のため,頭側気管は甲状軟骨レベルの閉鎖が必要であり,甲状軟骨裏側の粘膜を剥離し,粘膜の縫合閉鎖をする方法を選択した.術後は合併症なく経過し,誤嚥性肺炎は減少し,気管カニューレも一時的に抜去可能となった.福本法は気管切開術後でも,大きな気管孔を確保できる有用な術式であるが,本症例のように高位気管切開後は,頭側気管の閉鎖に工夫が必要な場合があることを認識しておく必要がある.