日本小児外科学会雑誌
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原著
腹壁破裂と停留精巣の関連についての検討
牟田 裕紀小高 明雄井上 成一朗北川 大輝別宮 好文
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2017 年 53 巻 4 号 p. 895-898

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抄録

【目的】腹壁破裂男児にはしばしば停留精巣を合併する.胎児期の腹圧低下が停留精巣の発生に影響していると言われているが,その原因ははっきりしていない.我々は腹壁破裂と停留精巣の関連を検討したため文献的考察を加えて報告する.

【方法】当施設で2006年から2015年の10年間に出生した腹壁破裂男児13例を停留精巣群(以下UDT群)と非停留精巣群(以下N群)の2群に分類し,在胎週数,出生体重,腹壁欠損孔の大きさ,サイロ形成術後の腹壁閉鎖に要した日数を後方視的に比較検討した.また,停留精巣の自然経過に関しても検討した.

【結果】症例は13例.全例で生直後にサイロを形成し二期的に腹壁閉鎖を施行した.13例中6例(46.2%)に停留精巣を認めた.全例片側の停留精巣であった.在胎週数,出生体重,欠損孔サイズは両群間で有意差を認めなかったが,腹壁閉鎖に要した日数はUDT群9.8日に対しN群では6日とUDT群で有意に延長(P=0.011)していた.また,当施設では腹壁破裂に合併した停留精巣では合併症のない停留精巣と同様に1歳まで経過観察を行った上で手術適応の検討をしているが,精巣の自然下降を認めたのは1例(16.7%)のみでありその他の症例では外科的介入を必要とした.

【結論】UDT群ではサイロ形成後に腹壁閉鎖に要する日数が長くなる傾向にあり,胎児期の腹腔内圧低下が腹腔容積の不十分な発育並びに停留精巣の原因となっている可能性が示唆された.また,腹壁破裂に合併した停留精巣の治療は待機的手術で良いと考えられるが,一般的な停留精巣と比較して精巣の自然下降が少なく手術が必要である可能性が高いと考えられる.

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