日本小児外科学会雑誌
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原著
腹腔鏡を用いた移動性精巣における腹膜鞘状突起開存の検討
小松崎 尚子橋詰 直樹浅桐 公男深堀 優石井 信二七種 伸行東舘 成希吉田 索田中 芳明八木 実
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2018 年 54 巻 6 号 p. 1194-1197

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抄録

【目的】移動性精巣の外科的治療方法は精巣固定術であるが,精巣固定術の場合に鼠径部からの腹膜鞘状突起(patent processus vaginalis:以下PPV)の高位結紮を行うことが標準術式とされる.しかし移動性精巣は精巣の牽引が容易であることから,経陰囊的に精巣を牽引し陰囊内に固定することが可能である.よって鼠径部からの高位結紮を省略する方法も施行されている.この場合PPVの有無が術後の鼠径ヘルニアの合併を来す可能性が危惧される.我々は移動性精巣の治療の際に腹腔鏡でPPVを確認し,PPV陽性は高位結紮付加,陰性例は陰囊固定のみを選択している.移動精巣におけるPPVの有無について検討した.

【方法】当施設における外科的治療を行った4歳未満の移動性精巣症例で,腹腔鏡下PPV確認を行った24症例39精巣に対しPPVの有無について検討した.

【結果】左右側数は両側15症例,右側のみが2症例,左側のみが7症例であった.精巣挙上範囲は鼠径部までが18精巣,陰囊上部までが21精巣であった.PPV陽性例は5精巣であり,右2例,左3例であり,左右側や精巣挙上範囲の有意差は認められなかった.術後の鼠径ヘルニア発症は認められなかった.

【結論】今回の検討では移動性精巣のPPV陽性率は従来報告されている鼠径ヘルニアの対側PPV陽性率よりも低く,陰囊アプローチのみで精巣固定しPV結紮を省略することは可能だと思われる.

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