2018 年 54 巻 7 号 p. 1347-1350
症例は10か月,男児.胆汁性嘔吐および経口摂取不良を主訴に来院し,熱源不明の発熱およびイレウスの診断で入院した.翌日の腹部CTにて絞扼による小腸イレウスを疑い,緊急手術を行った.トライツ靱帯から約80 cmの部位に捻転した重複腸管を認め先端が炎症性に大網と癒着し,付着部を閉塞起点とした小腸イレウスを来していたため,重複腸管および付着部を含む約20 cmの小腸切除を施行した.病理所見では捻転部は腸管粘膜上皮や平滑筋など腸管構造を有し,重複腸管壁は捻転による絞扼で壊死を来していた.膵組織や胃粘膜の迷入は認めなかった.術後にイレウスは順調に改善したが,腹腔内感染による筋膜離開と皮下膿瘍のためドレナージ術を施行し,退院後1か月で腹壁再建術を行った.重複腸管はしばしば遭遇するが本症例は捻転形式が稀で,術前診断が困難であった.今回我々は,まれな重複腸管自体の捻転によりイレウスを発症した1例を経験したので報告する.