2024 年 3 巻 3 号 p. 27-42
本稿では、パネルデータを用いて、労働者の心身の不調がどのような要因で決まるのか、実証分析を行い、労働者の雇用形態や仕事の性質、働き方の柔軟性をはじめ、労働環境などがどのような影響を与えているのか検証する。さらに,生活や仕事の満足度の決定要因についても検証することとする。本稿の主な結果は以下のとおりである。正規雇用の心身の不調が顕著であり、男性では、不本意型非正規雇用の心身の不調が顕著な傾向にあった。一方で、正規雇用の生活満足度は高く、不本意型の非正規雇用は生活、仕事両方の満足度が低くなっていた。また、勤務日の選択が可能な場合、メンタル面での不調が緩和されているが、勤務時間や勤務場所が選択可能な場合は、不調が大きい傾向にあった。医療・社会保険・社会福祉業、教育業、公務では、生活や仕事の満足度が高くなっており、仕事のやりがいや職の安定感も背景にあると考えられる。