抄録
近年, 気管支内挿管を必要とする呼吸不全症例に単純ヘルペスウイルスによる肺炎・下気道感染の併発を認めることが報告されている。悪性リンパ腫に対し, ステロイド剤を含む化学療法剤による加療中, 成人呼吸窮迫症候群へと移行, 人工呼吸管理を施行した症例に単純ヘルペス肺炎の合併を認めた。発見の動機は, 気管内分泌物中に認められた多数の核内封入体を含む単純ヘルペス感染細胞の証明であった。モノクローナル抗体による酵素抗体法により, 感染細胞はII型単純ヘルペス細胞と同定した。その後剖検により, 肺内にII型単純ヘルペス肺炎, 並びにカリニ肺炎の証明がなされた。