抄録
20世紀における分子生物学的手法の導入は, 基礎研究を著しく発展させ, 臨床医学においては, 単一遺伝子疾患の診断を向上させた。しかし, 21世紀においては, ほとんどすべての疾患において, その病態形成に関わっている多数の遺伝子を網羅的に解析して診断・治療に応用する, という多因子疾患への導入が実現されつつある。その大きな推進力が, 本年2月に報告されたヒトゲノム計画の全ドラフトゲノム配列解読であり, その産物として300万個以上も存在すると推定された一塩基多型(SNP)の存在である。呼吸器疾患においても例外ではなく, 気管支鏡を用いて得られた臨床検体から, 病理学的解析のみならず, 分子生物学的解析により, より多くの情報を得る試みがなされつつあり, これが一般臨床に応用される日も近いと考える。