抄録
背景.食道手術における気道損傷は稀な合併症の一つである.今回,食道癌術中に発生した気管膜様部損傷に対し,有茎肋間筋弁を用いて修復し得た症例を経験したので報告する.症例. 63歳,女性.胸部食道癌術中に気管膜様部損傷を来したため,直接縫合を試みたが縫合部位が裂け換気不全に陥った.そのため開胸肋間とは別の第6肋間で有茎肋間筋弁を作製し,損傷部位を被覆.縫合閉鎖した.術後経過は良好で. 2週後の気管支鏡検査では筋弁が気管内腔に隆起していたが2か月後には筋弁は平坦化し,一部が気道上皮に覆われていた.結語.食道癌術中の気管膜様部損傷に対して,有茎肋間筋弁は損傷部位を被覆し閉鎖する生体組織として非常に有用である.