2016 年 38 巻 6 号 p. 490-493
背景.迅速細胞診(rapid on-site cytologic evaluation;ROSE)は,診断成績の向上に寄与するなど近年その有用性が報告されているが,その精度管理に関する検討は十分されていない.当科でROSEを導入した後1年間の精度管理について検討したので,ここに報告する.対象と方法.2013年10月24日から2014年10月31日の間に当科で気管支鏡検査を施行された269例のうち,ROSEを施行した183例について後方視的に解析した.精度については同じ検体についてROSEと病理診断結果を比較し,感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率・正診率について検討した.また経過中,約4か月毎に呼吸器内科医,細胞診断士,病理医を交えて評価基準を検討した.結果.病理診断で最も多かったものは悪性腫瘍110例であった.導入から4か月毎に,不一致例を中心に見直しを行い,陽性基準の修正などの精度管理を行うことで,十分な正診率を保ちつつ陽性的中率の向上を得た.1年間を通してのROSEの感度・特異度は83%・85%,陽性的中率・陰性的中率は89%・77%,正診率は84%であった.結語.ROSEの導入にあたって,定期的な見直しを行い精度管理することで,適切な精度を得ることができた.