2016 年 38 巻 6 号 p. 494-499
背景.縦隔成熟奇形腫は無症状で検診発見されることが多いが,隣接臓器へ穿破し,肺炎や胸膜炎を起こすことがある.肺へ穿破し区域気管支にまで及んだ縦隔成熟奇形腫の1例を報告する.症例.53歳男性.2014年6月検診で胸部異常陰影を指摘され受診した.胸部CTでは前縦隔に石灰化を含む腫瘤,およびそれに接して右上葉に軟部陰影を認めた.気管支鏡検査では右B3内腔におから状の乳白色物質を認め,生検を行ったが壊死様の非細胞成分で詳細は不明であった.前縦隔腫瘍とその肺内穿破あるいは原発性肺癌の合併と考えられ,縦隔腫瘍を右上葉と一塊に切除した.縦隔腫瘍内には皮膚,脂肪織,平滑筋,軟骨などが認められ,右上葉には穿破によると考えられる化学性肺炎が認められたことから,成熟奇形腫の肺内穿破と診断した.結論.石灰化を伴う前縦隔腫瘍から奇形腫が疑われ,気管支鏡でおから状の乳白色物質を認めた時は,成熟奇形腫の肺内穿破が鑑別に挙げられる.