気管支学
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症例
肺炎・胸膜炎と鑑別を要した肺MALTリンパ腫の1例
田中 和樹松田 周一加藤 慎平矢野 利章小笠原 隆笠松 紀雄須田 隆文
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キーワード: 悪性リンパ腫, MALT
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2017 年 39 巻 2 号 p. 136-141

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抄録

背景.肺原発の悪性リンパ腫は全悪性リンパ腫の0.4%前後,全肺腫瘍の0.5~1%以下と報告されている稀な疾患である.今回我々は肺原発MALTリンパ腫を経験したので報告する.症例.69歳女性.某年7月初旬より3週間咳嗽や呼吸困難が持続し,近医の胸部X線写真で右肺野に広範な浸潤影と右胸水を指摘され,当院に救急搬送された.1週間の抗菌薬投与も胸部陰影は改善乏しく,右胸水が増加したため胸腔ドレナージを開始した.血清中のIgMが上昇しており,免疫電気泳動でIgM λ型のM蛋白が検出された.気管支鏡検査では肺胞洗浄液中のリンパ球分画増加が認められ,肺組織へのlymphoepithelial lesion(LEL)を呈するCD20陽性リンパ球の浸潤も伴っており,MALTリンパ腫が疑われた.胸水中にもCD20陽性リンパ球が増加しており,フローサイトメトリーでλ型への明らかな偏りが見られたことからmonoclonalityが証明された.肺組織と胸水中の細胞が同一であると考え,肺原発MALTリンパ腫と診断した.結論.肺原発MALTリンパ腫は稀な疾患である.今回我々は初診時に肺炎・胸膜炎を疑い抗菌薬治療を行ったが反応が乏しく,精査の過程で肺原発MALTリンパ腫の診断に至った症例を経験したので報告する.

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© 2017 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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