2018 年 40 巻 1 号 p. 11-15
背景.防水スプレーの吸入による肺障害の症例報告は散見され,原因物質はフッ素樹脂と考えられている.われわれは防水加工剤の噴霧後,肺障害をきたし,速やかに自然軽快した1例を経験した.症例.39歳,男性.靴工場で防水加工剤を噴霧する作業をしていたところ,開始約2時間後より呼吸困難,頭痛,寒気が出現した.作業直後の喫煙はなかった.翌日,当院に入院となり,胸部high-resolution CTで肺野全体にびまん性すりガラス様陰影を認め,気管支肺胞洗浄液では好中球増多(30%)を認めた.無投薬にて経過をみたところ,約1週間で軽快した.結論.本例は防水加工剤に含まれるフッ素樹脂の直接吸入により肺障害を引き起こしたと考えられたが,吸入直後に喫煙はしていないため熱分解産物の発生はなく,そのため早期に自然寛解したと推察された.