2019 年 41 巻 4 号 p. 370-374
背景.月経随伴性気胸は月経前後に発症し,妊娠中など無月経の時期には発症しないことが特徴とされている.しかし,その発生機序に関しては,未だに明確な見解は確立されていない.今回我々は,妊娠中に発症した月経随伴性気胸の1例を経験したので報告する.症例.32歳,女性.29歳時より月経時に胸痛を自覚しており,月経随伴性気胸を疑われていたが,保存的加療で軽快していた.今回は妊娠34週4日目に胸痛を自覚し,右気胸の診断となった.帝王切開にて出産した後もair leakが持続したため,胸腔鏡下手術を施行した.胸腔内を観察すると,中葉に1 cm大の囊胞,横隔膜に複数個の小孔を認めたため,右中葉部分切除術と横隔膜病変の生検,縫縮術を施行した.病理組織学的に囊胞壁及び横隔膜の小孔周囲にエストロゲンレセプター及びプロゲステロンレセプター陽性細胞を認め,月経随伴性気胸と診断した.結論.本症例は妊娠中に気胸を発症しており,月経随伴性気胸の発生機序を考察する上で貴重な症例と考えられた.