2020 年 42 巻 3 号 p. 240-244
背景.肺アスペルギルス症に空洞切開術を施行した場合,気管支瘻,気管支肺炎による痰排出が持続し切開部の管理に難渋することがある.さらに気管支動脈が発達し気道出血が生じ得る.肺切除は合併症の観点から慎重にならなければならない.一方,EWSによる気管支充填術が気管支瘻に有効であり,気管支動脈塞栓術が気道出血の対策となり得る.症例.60歳女性.右肺上葉肺アスペルギルス症のため気管支鏡にて病巣へ抗真菌薬の投与を継続していたが改善せず,当科へ紹介され右肺上葉空洞切開菌塊除去,開窓術を施行した.術後気管支瘻による咳嗽困難と労作時息切れがあり,開窓部を活用して複数回の気管支充填術を施行した.気漏は減少し,咳嗽困難と労作時呼吸困難感は軽快した.さらに開窓部を粘着弾性包帯にて被覆し,気道内圧を保持することで外来通院可能とした.開窓部のガーゼ交換を継続していたが,気道出血が生じたため気管支動脈塞栓術を施行し軽快した.結論.肺アスペルギルス症術後にEWSによる複数回の気管支充填術,気管支動脈塞栓術を行うことで気管支瘻と気道出血を制御し得た症例を経験した.