抄録
奈良県吉野山において,ヤマザクラ(Cerasus jamasakura (Siebold ex Koidz.) H. Ohba var. jamasakura)の根系の鉛直分布と,地上部の樹木活力度,土壌硬度の関係を調査した。その結果,長谷川式土壌貫入計のS値0.7(cm/drop)よりも軟らかい土壌の最深位置(cm)より下にはヤマザクラの根が侵入しにくいことや,風化岩盤の亀裂を根系が伸長している様子が観察された。地上部の目視ランク評価により生育不良木と判定された個体の根の枯死率(本数ベースおよび断面積ベース)は良好木よりも高く,生存根の密度は低かった。また,不良木の根の伸長する深さは,土壌硬度によって制限される深さよりも浅い位置に留まっていることが観察された。