2012 年 38 巻 1 号 p. 244-247
大学農場の建設工事の際,絶滅危惧植物が生育する低茎草原を保全した。工事期間中は低茎草原の管理頻度が低下していた。絶滅危惧植物を保全するための柵の設置は対象種を草原ごと守ったものの,囲ったことが従来の管理を妨げる一因となった。保全対象となった絶滅危惧植物にはポリネーターとしてトラマルハナバチが重要であるため,季節を変えて 3 種の植物に対する訪花調査をおこなった。その結果,訪花が見られない時期もあった。この結果は,絶滅危惧植物の保全には,単に生育地ごと残すだけではなく,植生管理を容易にする工夫や生態ネットワークの回復などの対策が必要であることを示している。