2016 年 42 巻 1 号 p. 74-79
本研究では,栃木県北部に位置する宇都宮大学船生演習林を対象に,クマ剥ぎを受けたヒノキの被害実態を調査し,剥皮部の腐朽の進行について考察した。ヒノキの本数被害率は0.6%であり,被害時の林齢は11~93年であった。ヒノキの被害木の平均胸高直径は25.3 cmであり,被害木の胸高直径は,健全木のものよりも大きい値を示した。剥皮最大高は1.5~2.0 mが多く,剥皮率は10~30%が多かった。剥皮部表面の腐朽度,ピロディン打ち込み深さは剥皮後の経過年数とともに増加し,応力波伝播速度は減少した。被害を受けたヒノキでは,表面腐朽が被害後10年目に著しく進行するが,内部腐朽は不明瞭な傾向を示した。