日本官能評価学会誌
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新刊紹介
嗅覚はどう進化してきたか—生き物たちの匂い世界—
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2019 年 23 巻 1 号 p. 39

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新村芳人 著

岩波書店 2018年10月27日発行

定価1,400円+税

本書は,JST ERATO東原化学感覚シグナルプロジェクトでグループリーダーを務められている新村芳人先生(東京大学大学院 農学生命科学研究科 特任准教授)により執筆されたものです.嗅覚の仕組みや匂いの世界についての詳しい解説に加え,マスクメロン(MASKでなくMUSK)の語源の由来といったさまざまな匂いにまつわるトリビアなども交えながら説明されており,楽しみながらご一読いただける一冊です.

さまざまな情報が溢れている現代の人間社会では,五感の中でも視覚に頼ることが多く,嗅覚の重要性が忘れられる傾向にあります.しかしながら,私たち人間は400種類の嗅覚受容体で日常生活に存在する何十万種類もの匂いを嗅ぎ分けることができます.本書では,多種多様な匂いを少ない嗅覚受容体で識別する効率的な嗅覚の仕組みについて分かり易く説明されています.

また,生物が種ごとに独自の感覚世界をもつに至る進化の過程として,生物は生きるため,ある感覚を豊かにする反面,ある感覚を失ってきたと解説されています.このことは,同じ対象物を知覚しても,人間が知覚している内容(情報)と,ほかの生物が知覚している内容が異なっている事を意味しており,五感を用いて対象物を計測する官能評価を研究されている本学会の皆様にとっても興味深い内容と思います.是非ご一読をおすすめします.

(小川香料(株) 宮澤利男)

 
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