2014 年 44 巻 1 号 p. 41-60
日中収益率の二乗和から計算されるRealized Volatility (RV)は,観測されないボラティリティの精度の高い推定量であるが,市場の取引制度の影響によりバイアスが生じる.Takahashi et al. (2009)は,日次収益率とRVを同時に定式化することによりRVのバイアスを補正するRealized Stochastic Volatility (RSV) モデルを提案した.RSVモデルのパラメータは時間を通じて一定であると仮定されているが,現実の市場では,好況期にはボラティリティは平均的に低く,不況期にはボラティリティが平均的に高くなることが知られている.そこで,本稿では,平滑推移関数を用いてボラティリティの平均を時変的な関数として定式化したSmooth Transition RSV (STRSV)モデルを提案し,マルコフ連鎖モンテカルロ法によるベイズ推定法を示す.日米の株価指数データを用いた実証分析の結果,STRSVモデルはボラティリティの推移を適切に捉えることができ,従来のRSVモデルと比べてデータへの適合度が高いことが示された.