スポーツ社会学研究
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原著論文
IRBの再編成過程に見る世界戦略と権力関係
―ラグビーワールドカップの機能に着目して
松島 剛史
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2009 年 17 巻 2 号 p. 89-100

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抄録

 1970年代までにラグビーユニオンフットボールは世界各地に広がり、幾つか国際的なラグビー統括機構が設立された。こうした状況下にあって国際ラグビー連盟は、この頃から急速に「オープン化」やラグビー機構の統一へ向かって躍進する。本研究の対象とするラグビーワールドカップは、こうした変動期に現れ、1987年から4年おきに開催されている国際的なラグビー競技会である。
 本研究は、主に国際ラグビー連盟の議事録を用い、世界規模のラグビー機構の再編成という観点からワールドカップの役割について論じた。
 結果として、以下の事柄が明らかになった。まず、ラグビーの商業化が進む1970年代から、国際ラグビー連盟はラグビーの世界的発展や促進に関する施策を展開し、国際アマチュアラグビーフェデレーションとのグローバルな統括権の獲得を巡る緊張関係を生んだ。次いで、ワールドカップは、IRBが〈非ラグビー〉要素の排除の圧力を強めながら、IRBに属していなかったユニオンの包摂を図る装置となった。そして、このW杯の展開は、ラグビーに関する「グローバルな」意思決定機関や企業構造の形成を伴うものであり、新制国際ラグビー連盟がラグビーの世界的な発展と促進及び商業化過程において、世界規模でラグビーコードを統制し始める動向であった。

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© 2009 日本スポーツ社会学会
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