スポーツ社会学研究
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原著論文
「国策としてのスポーツ」論の系譜と“強化策”の問題と今後の課題
森川 貞夫
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2010 年 18 巻 1 号 p. 27-42

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抄録

 日本の全国的統轄スポーツ組織である体協(Japan Sports Association)・JOCはオリンピック大会に参加するために1911年に創立された。しかし体協・JOCは創立以来、スポーツの振興を多くのスポーツ愛好者に基礎を置いて進めるというよりは、政府・財界に寄生しながら今日まで進めてきたために未だ財政的にも組織的にも自立しえないでいる。したがって、戦前も戦後も「国策としてのスポーツ」への協力・推進と「競技力向上」に実際の活動・事業の力点が置かれてきた。
 1970年代前後の国際的な「スポーツ・フォア・オール」運動の進展に呼応するように一時日本でも国のスポーツ政策に路線の転換が行われたが、21世紀直前より再びオリンピック大会での「メダル獲得率」を目標にした「強化策」と結びついた「スポーツ立国」論という、大国主義的イデオロギーを中核にした「国策としてのスポーツ」論が幅をきかせ始めている。
 本論では、これまでの「国策としてのスポーツ」論を歴史的に追求しながら、さらに今日の「スポーツ立国論」が結局は「メダル獲得率」を目標とする「強化策」と結びつき、必然的に「実績主義」「メダル主義」に陥らざるを得なくなるという問題点を指摘し、それをどのように克服していくかの展望を「スポーツの高度化とスポーツの大衆化の統一」という視点から叙述する。

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© 2010 日本スポーツ社会学会
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