2011 年 19 巻 2 号 p. 19-32
以前から「新しい公共」論が説かれてきたが、スポーツにおいて『新しい公共』論が登場したのは、民主党政権の「スポーツ立国戦略論」に基づく平成23年度予算(案)からである。そこでは「自立的な拠点クラブを中核とする新たなスポーツコミュニティの形成」が掲げられ、「従前の教育委員会中心のスポーツ振興を越えた『新しい公共』の形成」を目指して、「スポーツコミュニティの形成促進」事業として提示された。
しかしながら、そこでは「スポーツを通じた地域課題(子育てなど)の解決」が「期待される効果」の一つとして示されたものの、果たしてどのような地域スポーツ政策が今後具体的に展開されていくのか、とりわけ「古い公共」として否定された「従前の教育委員会中心のスポーツ振興」とどのように区別されるのかは不明である。
本論では、シンポジウムのテーマである「子どものスポーツを支えるのは誰か」を中心に「新しい公共」論を批判的にとらえ、かつその問題点を克服していくために、地域における「非営利・協同」組織の可能性と期待について論じる。