スポーツ社会学研究
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原著論文
東日本大震災で被災したスポーツ集団の復興プロセス
―被災の様相と復興への力―
吉田 毅
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2012 年 20 巻 1 号 p. 5-19

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抄録

 東日本大震災はスポーツ界にも少なからず被害を及ぼした。本稿は、甚大な被害を受けたスポーツ集団の復興をおし進める主な力について解明することを目的とした。津波の被害を受けた某高校野球部と、地震の被害を受けた地域スポーツクラブとして、身体障害者を対象とする某車椅子バスケットボールクラブを事例に、各集団のスタッフやメンバーへの聞き取りを基に検討した。
 いずれの集団においても、人命に関わる被害はなかったものの、津波や地震でかけがえのない活動拠点が大きな被害を受け、監督あるいはメンバーの自宅が津波で全壊した。各集団の被災後の歩みには、言わば自力と他力とがかみ合って復興をおし進める様子が看取された。練習場所の確保および練習再開をめぐっては、主力メンバーや監督を担い手とする〈内発力〉と言うべき自力が発揮された。ただし、練習場所の確保の面では内発力に応えてくれる他力としての〈支援力〉が必要であった。また、各集団が練習を再開する前から注がれた、上記とは別種の〈支援力〉も貴重であった。 支援物資や義援金を届けてくれる他者や応援してくれる他者の力である。そうした支援力が内発力とともに集団の復興へ向けた力を強化したとみられる。更に、この種の支援力は、自宅をなくした監督やメンバーの〈再起力〉と言うべき自力を後押しした。特に支援力については、いずれの種も主に各界におけるつながり、換言すれば具象的な縁が貴重な源泉となったが、支援物資や義援金の面ではそれを超越して注がれた力も重要であった。

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© 2012 日本スポーツ社会学会
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